商品が売れるために必要なお客様の脳の仕組みと買いたい気持ちにさせる心理について解説します。
売れない商品はお客様の「脳の仕組み」を知れば良い
私たちは日頃、商品を買うときに、“自分の意思で商品を選んでいる”と思っていますよね。
「そんなの、当たり前じゃないか~」という皆さんの声が聞こえてきそうですが、けれども実際には、“自分の意思で選んでいる”のではなく、“選ばされている”のかも知れません。
ヒトの行動の95%は無意識で行われている
脳科学者のA・K・プラディープ氏によると、「人間の脳は、様々な感覚器官から入力された情報の最大95%を潜在意識のレベルで処理している」とのこと。
つまり、私たちが意識できるのは、脳の働きのわずか5%に過ぎなくて、残りの95%は無意識のうちに処理されているということです。
買い物をするとき、私たちは自分自身で考え、選択し、決定していると思っていますが、実際にはそうではなく、ほとんどの処理を、無意識の世界で行っているわけですね。
プラディープ氏は著書「マーケターの知らない『95%』」の中で、「商品を売るためには、その95%に働きかけなければならない」と語っています。
もしそうであるのならば、お客様にたくさんの商品を購入して頂くためには、「いかにして、この“95%”に働きかけるか」を考える必要があります。
ではどのようにして、この“無意識の領域(すなわち、「95%の世界」)”に働きかければよいのでしょうか。
お客様の無意識を読み解く
ハーバード大学経営大学院の名誉教授であるジェラルド・ザルトマン氏が著書「心脳マーケティング」のなかで興味深いことを語っていますので、ご紹介します。
「たとえば、雑誌の広告に写っている壁掛け時計のようなシンプルなものでも、その広告を記憶するうえでは強力なインパクトを与える。サービス・カウンターの光景が写っている広告に壁掛け時計が写っている場合は、壁掛け時計が写っていない場合と比べると、迅速なサービスというイメージを2倍程度強く想起させる」
(引用元:ジェラルド・ザルトマン著「心脳マーケティング」)
広告の中に写っている壁掛け時計は、ほとんどの人は気にしないと思います。
けれども、壁掛け時計を知らないうちに目にしていることで、私たちは無意識のうちに、「この会社は迅速なサービスを提供する」というイメージを持ってしまっているわけです。
このような脳の仕組みをうまく利用しているのが、「メンタリズム」です。
「メンタリズム」では、相手の無意識に働きかけることで、相手の選択肢を狭めていきます。
本人が“自分の意思で決定している”と思っていても、実際には、「メンタリスト」によって、選択肢を狭められているわけです。
さて、商売の現場においても、このような現象は“間違いなく”起こっています。
そうであるならば、お店の中の様々な物(バナー画像や言葉など)が、お客様の意思決定にどのような影響を与えるのか、しっかりと考える必要がありますね。
間違っても、お客様の買い物欲をそぐようなものを表示してはいけないわけです。
お客様の目に触れる場所に何を表示するのか、しっかりと考えることはとても重要です。
お客様を「買いたい気持ち」にさせるのはいったい何か?
商売が成功しているお店と、失敗しているお店の違いはどこにあるのでしょうか。
もしかすると、「お客様の記憶」を管理できているかどうかが、大きなポイントなのかも知れません。
お客様を買いたい気持ちにさせる商品の見せ方
ネット販売のお話の前に、或る実店舗の商品陳列のお話をしたいと思います。
先日、或る百貨店のお酒売り場で、「なるほど!!」と思わせるモノを見かけました。
それは、ビールグラスです。
商品として売られているビールグラス自体もなかなかユニークなのですが、私が最も感心したのは、商品の“見せ方”です。
グラスの中に、黄色と白色の紙を組み合わせて作った“ウソのビール”が入っていました。
この“紙で作られたビール”は、本当にさりげない工夫です。
けれどもこの“紙で作られたビール”があることによって、それを見た消費者は、「泡まで美味しいビールの味」や、「友達や家族とビールを飲んだときの楽しい記憶」を“なぜか知らないうちに”思い出すかも知れません。
あるいはもしかすると、消費者は“無意識”のうちに、「たしかに、このグラスでビールを飲むと、美味しいかも知れないな」とか、「次に友人を家に呼ぶときは、このグラスでビールを飲もうかな」と考えるかも知れません。
つまり“紙で作られたビール”が刺激となって、消費者の心の中に様々なポジティブな感情が湧き上がってくるわけです。
そしてその結果、ビールグラスの購入に対する気持ちがより積極的になる可能性があります。
いったい何が、お客様の「買いたい気持ち」を呼び起こすのか
このように、人は何かを見たことがきっかけとなって、色々なことを思い出し、結果的に、商品を購入するというケースがあります。
この点について、ジェラルド・ザルトマンは著書「心脳マーケティング」のなかで、次のように書いています。
「記憶は、物理的に言うと脳細胞上で電気化学的に刻み込まれる。神経科学では、この刻み込まれたものはエングラムと呼ばれる。(中略)一度貯蔵されたエングラムは、何らかのキュー(合図)あるいは刺激を受けることによって活発化する。(中略)キューの中には、わかりやすいものもあるが、無意識のうちに作用するようなわかりにくいものもある。通常、我々はほとんどのキューについて意識していない。しかしこうした刺激こそ、消費者の購買意図につながるような記憶を喚起する手段として、マーケターが使い得る重要な道具の1つである」
(引用:ジェラルド・ザルトマン著「心脳マーケティング」)
ザルトマン氏が言うように、キューがお客様の無意識に働きかけて、購入につながるような記憶を喚起するのであれば、やはり、「キューをいかにして管理するか」ということが、売上を伸ばすうえで、とても重要なポイントになってきます。
お店の中で表示するものや、商品説明の仕方、使用する広告など、様々なものがキューとなり得ます。
そうしたものをどのようにして管理するかが、結果的には、お客様の購入意欲を管理することになっていきます。
ビールグラスを空っぽのまま展示するか、それとも、“紙で作られたビール”を入れて展示するのか。
それが、成功と失敗の分かれ道になるのかも知れませんね。
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