スタッフのモチベーションをあげ、やる気を出させるためにはどうしたら良いのか…。「ホーソン効果(人は自らが注目されていると感じると、生産性を高める傾向があること)」を元にいくつかの事例と心理学的テクニックをご紹介します。
心理学でスタッフのモチベーションをあげる!
スタッフのモチベーションをどのように高めるかは、会社を経営している方や、部下を持つ方なら日々模索されているかと思います。
給料をアップさせればよいのか。それとも職場の環境を改善すればよいのか。それとも、社内の人間関係を改善すべきなのか…様々なアイデアがありますが、その一つにホーソン効果があげられるでしょう。
ホーソン効果
「ホーソン効果」とは、「人は自らが注目されていると感じると、生産性を高める傾向があること」を説明した心理学用語です。
この「ホーソン効果」は、1924年から1932年にかけて、アメリカのウエスタン・エレクトリック社のホーソン工場で行われた実験の中で発見されたものです。
もともとこの実験は、「照明が労働者の生産性にどう影響を及ぼすか」を調べるために行われました。
ところが、興味深いことに、この実験で明らかになったことは、まったく別のことでした。
それは、照明が明るいか暗いかに関係なく、「生産性の実験を行う」ということをスタッフに知らせただけで、生産性がアップするということです。
つまり、スタッフが「見られている」「注目されている」と感じているとき、仕事の効率がアップすることが明らかになったわけです。
ディズニーの「スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート」と「ファイブスター・カード」
さて、「ホーソン効果」の事例として挙げられるのが、ディズニーの「スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート」と「ファイブスター・カード」という仕組みです。
これはいったいどのような仕組みなのでしょうか。
日刊工業新聞に、ディズニーのスタッフの方のお話が掲載されていますので、引用したいと思います。
キャスト同士が働きぶりをたたえ合う「スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート」があります。配られたカードに自分がすばらしいと思うキャストの名前と コメントを書くんです。今年は 24 万枚以上が交換されたんですよ!。書かれたメッセージの内容やカードの枚数によって表彰される「スピリット・アワード」が毎年開かれるんです。私はキャス ト時代に 3 回、選ばれたことがあります!。
もうひとつ「ファイブスター・カード」という制度があります。これはマネジメント側が「素晴らしい接し方をしているな」と思ったキャストに渡すカード で、一枚もらうと特別なパーティーに参加できるんですよ。パーティーには軽食が出たり、ミッキーが出演する特別なショーが催されたり!。私は カードを持ち歩いて一日一枚 “輝いている” キャストに渡すようにしています。
(引用:日刊工業新聞「15歳で夢の国に“入社” オリエンタルランド 石川秀香(いしかわ・ひでか)さん」)
どちらも、「他者から見られる」という点で共通していますね。こうした仕組みを作ることで、ディズニーはスタッフのモチベーションを高めています。
スタッフの働きぶりに注目し、それを評価することで、生産性を上げることができそうです。
人材育成の60秒ルール「スタッフや社員を60秒以内に褒めること」
みなさんはスタッフや社員の方を褒めるとき、すぐに褒めますか?
それとも、あとで時間を見つけて、褒めますか?
あるいは、給料アップや昇格などの方法で、間接的に褒めますか?
実は、褒めるタイミングによって、スタッフのそのあとの行動が違ってくることをご存知ですか?
褒めるならいますぐに!!
「60秒ルール」とは、行動分析学の理論のひとつで、「相手が行動してから60秒以内に褒めたり叱ったりしなければ、強化や弱化の効果を十分に得ることが出来ない」という法則のことです。
ちなみに、「強化」というのは、相手がある行動をした直後に、褒めたり報酬を提示することで、その行動がたくさん繰り返されるようにすることです。
「弱化」というのは、その逆で、ある行動の直後に、叱ったり、注意したりして、その行動が繰り返されないようにすることです。
では、いつ褒めたり、叱ったりすればよいのでしょうか。
“行動を強化や弱化するときは、行動の直後60秒以内が勝負である”というのが、「60秒ルール」の考え方です。
もし社員やスタッフの方が素晴らしい働きをし、その行動を今後も続けてほしい場合は、すぐに褒めるのがベストですね。
ぜひ、みなさんも試してみてくださいね。
※ただし、高度な行動に関しては、60秒ルールは適応できないという見方もありますので、そのあたりはご注意ください。
社員へのボーナスは「先払い」にすると業績がアップ!損失回避性について
社員のモチベーションを高めるためのもっとも簡単な方法は「お金」だという方も多いでしょう。報酬を先払いする…それだけで業績の上がった事例をご紹介します。
報酬を先払いすると業績が上がる
2012年にシカゴ大学が非常に興味深い実験結果を公表しています。
その実験というのは、「教師に対するインセンティブ(報酬)の方法が、生徒の成績にどのような影響をおよぼすか」というものです。
この実験には、150名の教師が被験者として参加しました。
まず、教師たちはランダムに二つのグループに分けられました。
一つ目のグループ(グループA)の教師たちは、1年間の学期が始まる前に、ボーナスを先払いで渡されました。
ただし、もし生徒の成績が悪ければ、成績のレベルに応じて、受け取ったボーナスを返さなければいけません。
二つ目のグループ(グループB)の教師たちは、1年間の学期が終わったあと、生徒の成績の向上具合に応じて、ボーナスをもらうことができます。
さて、どちらのグループのほうが、生徒の成績が良かったでしょうか。
結果は非常に興味深いものでした。
グループBの生徒たちの成績がそれほど変わらなかったのに対し、グループAの生徒の成績は、10%ほど向上したのです!!
原因は損失回避性
ではなぜ、このような結果になったのでしょうか。
その原因としてシカゴ大学の研究者が挙げているのが、「損失回避性」です。
損失回避性とは、心理学用語で、「同じ額の利益と損失では、損失をより大きく評価し、損失を避けようとする心理的傾向」のことです。
分かりやすく言いますと、「人は、物を得ることよりも、失うことに対する恐怖心のほうが強い」ということです。
この「損失回避性」を使って、シカゴ大学の実験を見てみましょう。
まず、グループBの教師は、学期の初め、何も手にしていません。ボーナスをもらうのは、あくまでもその学期が終わったあとです。
そのため、グループBの教師は、生徒の成績が悪くても、何も失うものがありませんね。
一方、グループAの教師は、学期の最初にボーナスをもらいます。ただし、生徒の成績次第では、そのボーナスを失う可能性があります。
つまり、グループAの教師は、「手にしたボーナスを失う恐怖心」と闘わなければいけないわけです。
これはまさに、「損失回避性」が働いている状況だと言えます。
グループBの教師が持つ「ボーナスを得たい」という気持ちよりも、グループAの教師が持つ「ボーナスを失いたくない」という気持ちのほうが大きいことが、生徒の成績となって表れたのだと解釈できますね。
さて、この「損失回避性」は、職場の中でも活用できるのではないでしょうか。
試してみる価値はありそうですね。
参考文献:
THE UNIVERSITY OF CHICAGO「Student performance improves when teachers given incentives upfront」
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