アニメに限らず、ドラマや映画でも楽しくハッピーな作品ばかりではありません。名作と呼ばれるものの中にも、登場人物たちが絶望的な状況や過酷な運命に巻き込まれ、悲しい結末を迎える…そんな作品が数多くあります。
今回はそうした作品の中から、ただ残酷で悲壮なだけでなく観た人の心に問いかけ、印象に深く残るアニメ作品を「鬱アニメ」と位置付けて、幅広い年代、ジャンルから7作品ご紹介します。
『鬱アニメ』セレクション7作品『強烈な悲壮感と深い余韻』
無敵超人ザンボット3
1977-1978年 日本サンライズ
今や「機動戦士ガンダム」で有名な富野由悠季さんが原作及び総監督を手掛けたロボットアニメ作品です。
地球に侵略してきた宇宙人ガイゾックとそれに立ち向かう主人公とその一族の戦いを描いています。
実は、主人公一族は過去にガイゾックに母星を滅ぼされた異星人の末裔で、純粋な地球人ではありません。
そのため地球人は主人公たちがガイゾックを呼び寄せたと誤解し、地球を守るために命がけで戦う彼らを非難するのです。
「地球から出ていけ」と。
主人公たちは苦悩しながらそれでも数々の激戦をくぐり抜け、ガイゾックの本拠地で最終決戦を迎えます。
王道的な物語ながら、主人公たちのおかれた過酷な状況と苦悩、「人間爆弾」に代表されるあまりに残酷なエピソード、そしてガイゾックの正体と共に明かされた真実は、かなり衝撃的です。
従来あった単純な「勧善懲悪」ではなく、観る人に「正義とは何か そしてそれを決めるのは誰か」ということを問いかける、奥の深い作品となっています。
伝説巨人イデオン
1980-1981年 日本サンライズ
こちらも「ガンダム」の富野由悠季さんと矢立肇さんが原作を手掛けたロボットアニメ作品です。
「イデ」という伝説の無限エネルギーを巡って、その「イデ」の力で動く遺跡「イデオン」を発掘した地球人と、「イデ」を探し求めていた異星人バッフ・クランの争いが描かれています。
この物語の悲壮なところは、戦うつもりなどなかった2つの種族があまりに不幸な出会い方をして、文化の違いなどによる誤解を重ねた結果、人種同士の全面戦争にまで発展してしまったことです。
そして、その争いに「イデ」の力が大きく影響することで、取り返しのつかない状況へと導かれてしまうのです。
終わることのない命がけの逃走を強いられた主人公をはじめとする地球人たちの悲痛な想いは、胸に迫るものがあります。
争いの果てに「イデ」にもたらされた2つの種族の結末は絶望か、それとも一筋の希望か。観て判断して頂きたいです。
ウインダリア
1986年 カナメプロダクション
藤川圭介さんの小説「ウィンダリア 童話めいた戦史」を原作とした長編アニメ映画です。西洋ファンタジー的な雰囲気がありながら、江戸時代に上田秋成よって書かれた「雨月物語」の「浅茅が宿」が下敷きとなっているところも興味深い作品です。
「童話めいた戦史」というサブタイトル通り、おとぎ話のような世界観を背景に、戦争に翻弄された2組の男女の物語が描かれています。
この物語には、根底に「約束」というテーマがあります。
妻のために富を手に入れ必ず帰ると約束して隣国へ行った夫。夫の帰りをいつまでも待っていると約束した妻。結婚の約束をしていた対立する2つの国の王女と王子。
それぞれの約束に対する想い、そして、その約束の結末が本当に切なく胸を打ちます。深い哀愁と余韻が漂う美しくも悲しい物語です。物語の雰囲気をより深める音楽にも注目してください。
機動戦士Vガンダム
1993-1994年 サンライズ
社会現象にもなった国民的作品「機動戦士ガンダム」シリーズの1つ。テレビシリーズとしては4作目です。
地球連邦政府の統制が低下した「宇宙戦国時代」を背景に、ある宙域を支配するザンスカール帝国とレジスタンス組織のリガ・ミリティアとの戦いが描かれています。
ガンダムシリーズについては、多くの場合対立する国家、思想、人種などを軸とした戦いが物語の中心となっていて、主人公やその仲間たちは、若くしてその戦いの矢面に立たされていきます。
戦争や紛争が物語の軸にある以上、登場人物の悲劇や死は避けられないところがありますが、「Vガンダム」の主人公は13歳。主人公のガンダムパイロットとしてはシリーズ最年少なのです。
しかも、ガンダムシリーズの中でも老若男女を問わず犠牲者が多く、残酷な描写も少なくありません。
ただ、過酷の状況だからこそ強く印象に残る主人公の成長や極限状態の中での人間ドラマが、他のシリーズにも共通するガンダム作品の魅力です。
バジリスク~甲賀忍法帖~
2005年 GONZO
日本を代表する小説家の1人、山田風太郎さんの代表作「甲賀忍法帖」を原作としたコミック「バジリスク~甲賀忍法帖~」をアニメ化した作品。
徳川家の継承者争いのために、最後の1人になるまで戦う命がけの忍術合戦を命ぜられた忍者たちの死闘が描かれています。
アニメではそれぞれの里での日常などオリジナルの要素が加わり、忍者たち個々の性格や人間味などがより際立っています。
原作の「甲賀忍法帖」は50年以上も前に書かれたものですが、とてもそんな昔に書かれたとは思えないほど斬新で、現在の「バトルもの」と言われる作品に非常に大きな影響を与えたと言われている名作です。
超人的な能力を駆使して闘う伊賀と甲賀の精鋭たち10人対10人の忍術合戦は、各能力を活かした戦術や勝敗が予想できない能力者同志の対決など、純粋なバトルものとして楽しめる1面もあります。
物語の内容としては重く切ないものではありますが、エンターテインメント性は高い作品だと言えます。
ぼくらの
2007年 GONZO
2004年から2009年まで連載されていた鬼頭莫宏さんの同名コミックが原作。突然、巨大ロボット「ジ・アース」の操縦者として、地球を守るための戦いに巻き込まれていく15人の少年少女たちの物語です。
彼らは1人ずつ操縦者として選ばれ、48時間以内に勝たなければ地球上のあらゆる生物が死滅してしまうという、重い運命を背負いながら地球を襲う謎の敵と戦うことになります。
そして、戦いに勝ったとしても、人の生命力で動く「ジ・アース」の操縦者の命はそこで尽きてしまうのです。
物語は、そうした極限状態の中で操縦者に選ばれ、葛藤しながらも戦いに身を投じる少年少女たち1人ずつに焦点を当てながら進んでいきます。
途中、明らかになった敵の正体に苦悩は増していきますが、それでも死と向き合った彼らは、自分の人生や生きる意味を見つめ直し、それぞれの想いで戦うことを決意していくのです。
まだ13歳の操縦者たちそれぞれの決断が胸に迫ります。なお、物語の後半はアニメのオリジナルストーリーで展開し、原作とは違う結末を迎えます。原作と比べてみるのもいいかもしれません。
魔法少女まどか☆マギカ
2011年 シャフト
2011年のテレビシリーズが放送されて以降、2012年と2013年に公開された映画も社会的な話題作となったオリジナルアニメ作品です。
1つだけ願いを叶えてもらうかわりに、人類の敵である「魔女」と戦う「魔法少女」になった少女たちの運命を描いています。
可愛らしいデザインのキャラクター、どこかメルヘンな雰囲気の魔女たちなど、一見するとこれまでにあった女の子向け「魔女っ子」モノの印象がありますが、作風はかなりのダーク・ファンタジー。
物語序盤にして先輩魔法少女・巴マミの身に起こる悲劇、明らかになる魔法少女の秘密と魔女の正体はかなり衝撃的で、魔女と戦い続ける宿命を背負った魔法少女たちの行く末が切なく哀しいです。
苦悩の末に魔法少女となった主人公・鹿目(かなめ)まどかの戦いを見届けて頂きたいです。テレビシリーズのその後が描かれた2013年公開の映画もぜひご覧ください。
まとめ
『鬱アニメ』セレクション7作品『強烈な悲壮感と深い余韻』
・無敵超人ザンボット3
・伝説巨人イデオン
・ウインダリア
・機動戦士Vガンダム
・バジリスク~甲賀忍法帖~
・ぼくらの
・魔法少女まどか☆マギカ
こうした作品は観た人ごとに感じる印象が違ってきますので、「鬱アニメ」という位置づけに疑問を感じるものもあるかもしれません。色んな余韻を感じてみてください。
なお、かなりショッキングな場面が登場する作品もありますので、本当に苦手な方はご注意ください。
コメント コメントが多い記事もあります。読んでみるとモチベーションアップに繋がります。